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ピックアップ論文

Ito, M., Tajima, Y., Ogawa-Ohnishi, M., Nishida, H., Nosaki, S., Noda, M., Sotta, N., Kawade, K., Kamiya, T., Fujiwara, T., Matsubayashi, Y. and Suzaki, T. (2024) IMA peptides regulate root nodulation and nitrogen homeostasis by providing iron according to internal nitrogen status. Nat. Commun. 15: 733. Linkプレスリリース

マメ科植物の根に形成される根粒の中で、根粒菌は空中窒素をアンモニアに変換する窒素固定を行います。窒素固定反応を触媒する酵素として知られるニトロゲナーゼが働くためには鉄が必要です。しかしながら、どこから、どのように鉄が根粒へと運ばれて窒素固定のために使われるのか、その仕組みは不明でした。本研究では、ミヤコグサの根粒形成過程における体内の窒素状態に応じたトランスクリプトーム解析を行い、IRON MAN (IMA)ペプチドを同定しました。IMAペプチドをコードする遺伝子は根粒菌の感染によって全身的(地上部と根)に発現し、根粒に鉄を集める働きを持つことが分かりました。さらに、シロイヌナズナにおけるIMAペプチドの機能解析によって、ミヤコグサとシロイヌナズナのいずれにも、IMAペプチドが植物体内の窒素量の増加に応じて鉄を得ることで窒素恒常性を維持し、植物の成長を制御する仕組みが存在することを発見しました。これらの知見によって、窒素と鉄のバランス調節を介した植物の環境適応および成長制御の仕組みの一端が明らかになりました。

Misawa, F., Ito, M., Nosaki, S., Nishida, H., Watanabe, M., Suzuki, T., Miura, K., Kawaguchi, M. and Suzaki, T. (2022) Nitrate transport via NRT2.1 mediates NIN-LIKE PROTEIN-dependent suppression of root nodulation in Lotus japonicus. Plant Cell 34: 1844-1862. Linkプレスリリース

窒素固定細菌との共生器官として機能する根粒の形成は、硝酸などの窒素栄養が土壌中に存在すると抑制されます。近年、この現象の制御に関わる因子が相次いで同定されていますが、窒素栄養と根粒共生を結びつける具体的な仕組みは未解明のままでした。今回の研究では、ミヤコグサの硝酸イオン輸送体LjNRT2.1が硝酸イオンの量に応じた根粒共生の抑制制御を仲介する機能を持つことを示しました。また、根粒形成の進行に伴ってLjNRT2.1の遺伝子発現の抑制により土壌からの硝酸イオンの取り込みが抑制される可能性が示唆されました。これらの発見によって、根粒共生を行うマメ科植物ならではの栄養獲得戦略の仕組みの一端が明らかになりました。

Nishida, H., Nosaki, S., Suzuki, T., Ito, M., Miyakawa, T., Nomoto, M., Tada, Y., Miura, K., Tanokura, M., Kawaguchi, M. and Suzaki, T. (2021) Different DNA-binding specificities of NLP and NIN transcription factors underlie nitrate-induced control of root nodulation. Plant Cell 33: 2340-2359. Linkプレスリリース

高濃度の窒素栄養が含まれる土壌では根粒形成が抑制されます。NLP転写因子がその制御に関わることが知られていましたが、根粒形成を促進または抑制する遺伝子が高窒素栄養環境では具体的にどのような仕組みによって発現調節を受けるのかはよく分かっていませんでした。今回の研究では、硝酸栄養存在下でNLPと根粒を作る働きを持つNIN転写因子が相互作用をすることで、NINの標的遺伝子の発現が抑制されることを示しました。また、NLPとNINのDNA結合特異性の違いがその制御の背景にあることも分かりました。これらの発見により、NLPをハブとした硝酸栄養に応じた遺伝子発現と根粒形成抑制の基本制御メカニズムが明らかになりました。

Suzaki, T., Takeda, N., Nishida, H., Hoshino, M., Ito, M., Misawa, F., Handa, Y., Miura, K. and Kawaguchi, M. (2019) LACK OF SYMBIONT ACCOMMODATION controls intracellular symbiont accommodation in root nodule and arbuscular mycorrhizal symbiosis in Lotus japonicus. PLOS Genet. 15: e1007865. Linkプレスリリース

ミヤコグサの野生型植物では、根粒菌は感染糸と呼ばれるトンネル状の構造の中を通り根の内部に侵入します。私たちが新たに同定したlack of symbiont accommodationlan)変異体では、感染糸の形成数が著しく減少する一方で、細胞と細胞の間を通る様式(細胞間侵入)で根粒菌が根の内部へと侵入することが分かりました。機能的な根粒が形成されるまでの日数を調査した結果、このlan変異体で見られる細胞間侵入は感染糸を介した侵入様式と比べて、根粒菌を受け入れて共生を成立させる方法としては効率の悪いものであることが判明しました。したがって、LANは感染糸の形成を介して効率的に根粒菌へ受け入れて根粒共生を成立するために必要であることが示唆されました。また、lan変異体では、アーバスキュラー菌根菌との共生器官である樹枝状体の形成がほとんど観察されなかったことから、LANは根粒共生だけでなく、菌根共生にも必要な因子であることが示されました。

Nishida, H., Tanaka, S., Handa, Y., Ito, M., Sakamoto, Y., Matsunaga, S., Betsuyaku, S., Miura, K., Soyano, T., Kawaguchi, M. and Suzaki, T. (2018) A NIN-LIKE PROTEIN mediates nitrate-induced control of root nodule symbiosis in Lotus japonicus. Nat. Commun. 9: 499. Linkプレスリリース

根粒共生は土壌中に高濃度の窒素栄養が存在すると抑制されることが古くから知られています。この現象は植物の環境応答の仕組みと関連していますが、その制御に関わる分子機構は不明でした。私たちが同定したミヤコグサ新規突然変異体 nitrate unresponsive symbiosis 1nrsym1)は、高濃度の硝酸栄養が存在しても、その影響をほとんど受けずに根粒共生を行います。nrsym1の原因遺伝子はNIN-LIKE PROTEIN(NLP)転写因子の一つ、LjNLP4をコードします。LjNLP4は硝酸に応答して核に移行し、下流の遺伝子発現の制御を介して根粒形成を調節する機能をもつことが分かりました。さらに、LjNLP4が根粒形成を負に制御するCLE-RS2ペプチドをコードする遺伝子の発現を制御することを明らかにしました。これらの発見によって、窒素栄養と根粒共生の制御を世界で初めて分子レベルで結びつける画期的な成果がもたらされました。

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